更新日:2024年9月28日
予防接種を受ける前に(こども)
1.予防接種の対象となる病気と予防接種による副反応について
ロタウイルス感染症(令和2年10月~)
病気について
ロタウイルスは、世界のどこでもみられる、主に5歳未満の乳幼児に多くみられる急性胃腸炎の原因ウイルスです。主な症状は下痢・嘔吐・発熱などで、ときに脱水、けいれん、肝機能異常、腎不全を、まれですが急性脳症等を合併することがあります。年齢にかかわらず何度でも感染発病しますが、乳児期での初感染が最も重症で、その後感染を繰り返すにつれて軽症化していきます。
副反応(腸重積症)について
腸重積症とは、腸が腸に入り込み、閉鎖状態になることです。0歳児の場合、ロタウイルスワクチンを接種しなくても起こる病気で、もともと、生後3~4か月齢頃から月齢が上がるにつれて多くなります。早めに接種を開始し、完了させることがすすめられています。
小児の肺炎球菌感染症
病気について
肺炎球菌は、細菌による子どもの感染症の二大原因のひとつです。この菌は子どもの多くが鼻の奥に保菌していて、ときに細菌性髄膜炎、菌血症、肺炎、副鼻腔炎、中耳炎などの病気を起こします。
副反応について
副反応の主なものは、発熱、注射部位の紅斑、腫れなどです。
B型肝炎
病気について
B型肝炎ウイルスの感染により起こる肝臓の病気です。B型肝炎ウイルスへの感染は、一過性の感染で終わる場合とそのまま感染している状態が続いてしまう場合(この状態をキャリアといいます)があります。キャリアになると慢性肝炎になることがあり、そのうち一部の人は肝硬変や肝がんなど命にかかわる病気を起こすこともあります。
副反応について
副反応の主なものは、倦怠感、頭痛、注射部位の腫れ、発赤などです。
注意事項
母子感染予防のために抗HBs人免疫グロブリンと併用してB型肝炎ワクチンの接種を受ける場合は、健康保険が適応されるため、定期接種の対象外となります。
DPT-IPV-Hib五種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風・ポリオ・ヒブ)
病気について
- ジフテリア
ジフテリア菌の飛沫感染でおこります。
症状は高熱、のどの痛み、犬吠様のせき、嘔吐(おうと)などで、偽膜と呼ばれる膜がのどにできて窒息死することがある恐ろしい病気です。発病2~3週間後には菌の出す毒素によって心筋障害や神経麻痺をおこすことがありますので、注意が必要です。
- 百日せき
百日せき菌の飛沫感染でおこります。
百日せきは普通のかぜのような症状ではじまります。続いてせきがひどくなり、顔をまっ赤にして連続的にせき込むようになります。せきのあとに急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ます。熱は出ません。乳幼児はせきで呼吸ができず、チアノーゼやけいれんがおきることがあります。肺炎や脳炎などの重い合併症をおこします。乳児では命を落とすこともあります。
- 破傷風
けがをした時に土の中などにいる破傷風菌が傷口から人の体内に入っておこる病気です。
破傷風菌の出す毒素は神経の麻痺や筋肉の激しいけいれんをおこします。
- ポリオ
「小児まひ」とも呼ばれ、手足の運動麻痺による後遺症を残します。感染の初期は発熱を主とする風邪の様な症状ですが、熱が下がるにつれて麻痺を起こします。
- ヒブ
インフルエンザ菌、特にb型は、中耳炎、副鼻腔炎、気管支炎、髄膜炎、敗血症、肺炎などを起こします。
副反応について
これら5つの病気を予防するための5種混合ワクチンの副反応は発熱、注射部位の発赤、腫れなどです。
麻しん(はしか)・風しん
病気について
- 麻しん(はしか)
麻しんウイルスは飛沫・接触感染だけでなく空気感染によっても起こります。感染力が強く、予防接種を受けないと多くの人がかかり流行する可能性のある病気です。発熱、せき、鼻汁、めやに、発疹を主症状とします。最初3~4日間は38度前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うとまた39~40度の高熱と発疹が出てきます。高熱は3~4日で解熱し、次第に発疹も消失します。
1歳になったら早めに接種を受けましょう。
- 風しん
風しんウイルスの飛沫感染によっておこる病気です。潜伏期間は2~3週間です。軽いかぜ症状で始まり、発疹、発熱、後頚部リンパ節の腫れなどが主症状です。眼球結膜の充血もみられます。発疹も熱も約3日間で治りますので「三日ばしか」とも呼ばれています。
妊婦が妊娠早期にかかると、先天性風しん症候群とよばれる子ども(心臓病、白内障、聴力障害など)が生まれる可能性が高くなるため、妊娠前に予防接種を受けておくことが大切です。
副反応について
注意事項
輸血またはガンマグロブリンの注射を受けたことがある人は接種時期について、かかりつけ医と相談してください。
水痘
病気について
水痘・帯状疱疹ウイルスに初めて感染したときにみられる急性の感染症で、直接接触、飛沫あるいは空気感染によって起こります。最も感染力の強い感染症のひとつです。潜伏期間は2週間程度です。主な症状は、発疹でかゆみを伴います。発熱を伴うこともあります。
副反応について
副反応はほとんど認められませんが、まれに発熱、注射部位の発赤、腫れ、しこりがみられます。
日本脳炎
病気について
日本脳炎ウィルスの感染でおこります。7~10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎になります。感染者のうち100~1,000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もあります。脳炎にかかった時の致死率は約20~40%で、神経の後遺症を残す人が多くいます。
副反応について
発熱、注射部位の発赤と腫れがみられることがあります。発疹、圧痛もまれに見られます。
また、極めてまれにADEM(急性散在性脳脊髄炎)が発生すると考えられています。
ADEM(急性散在性脳脊髄炎)
ウイルス感染後、あるいはワクチン接種後に生じる脳や脊髄、視神経の病気です。ワクチン接種後の場合は、1~4週間以内に発生することが多く、発熱、頭痛、意識が混濁する、目が見えにくい、運動障害などの症状がでます。
結核
病気について
結核菌の感染でおこります。我が国の結核患者はかなり減少しましたが、まだ2万人前後の患者が毎年発生しているため、大人から子どもへ感染することも少なくありません。乳幼児は結核に対する抵抗力が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残す可能性があります。
BCG(生ワクチン)
BCGは牛型結核菌を弱毒化してつくったワクチンです。
BCGの接種方法は、管針法といってスタンプ方式で上腕の2か所に押し付けて接種します。それ以外の場所に接種するとケロイドなどの副反応が出ることがありますので、絶対に避けなければなりません。接種したところは、日陰で乾燥させてください。10分程度で乾きます。
BCG接種後の経過
接種後10日頃に接種局所に赤いぽつぽつができ、一部に小さいうみができることがあります。この反応は、接種後4週間頃に最も強くなりますが、その後は、かさぶたができて接種後3か月までにはなおり、小さな傷あとが残るだけになります。これは異常反応ではなく、BCG接種により抵抗力(免疫)がついた証拠です。包帯をしたり、バンソウコウをはったりしないで、そのまま清潔を保ってください。自然に治ります。
ただし、接種後3か月を過ぎても接種のあとがジクジクしているようなときは医師にご相談ください。
副反応について
副反応としては、接種をした側のわきの下のリンパ節がまれに腫れることがあります。
コッホ現象
接種前に、お子さんが結核に感染している場合は、接種後10日以内に接種局所の発赤・腫脹及び接種局所の化膿などが現れ、通常2週間から4週間後に発赤や腫脹がおさまり、瘢痕化し、治癒する一連の反応が起こることがあります。これをコッホ現象といいます。コッホ現象と思われる反応がお子さんに見られた場合は、接種を受けた医療機関を受診してください。
2.予防接種を受ける前に
1.一般的注意
予防接種は健康な人が元気な時に接種を受け、その病原体の感染を予防するものですから体調のよい時に受けるのが原則です。日頃から保護者の方はお子さんの体質、体調などの健康状態によく気を配ってください。そして何か気にかかることがあれば、事前にかかりつけ医、保健センターにご相談ください。
以下の注意を守って、安全に予防接種を受けられるようにご協力ください。
- 受ける予定の予防接種について、通知やパンフレットをよく読んで、必要性や副反応についてよく理解しましょう。わからないことは接種を受ける前に接種医に質問しましょう。
- 当日は朝から子どもの状態をよく観察し、ふだんと変わったところのないことを確認してください。
接種の予定をしていても、体調が悪いと思ったら、かかりつけ医に相談の上、接種をするかどうか判断するようにしましょう。
- 予防接種を受ける子どもの日頃の状態をよく知っている保護者が連れて行きましょう。
- 予診票は接種する医師への大切な情報です。責任をもって記入するようにしましょう。
- 親子健康手帳(母子健康手帳)は必ず持っていきましょう。
2.予防接種を受けることができないお子さん
- 明らかに発熱のあるお子さん
一般的に、熱のあるお子さんは、接種会場で測定した体温が37.5℃を超える場合をさします。
- 重篤な急性疾患にかかっていることが明らかなお子さん
急性で重症な病気にかかっているお子さんは、その後の病気の変化もわからないことから、その日は接種を受けないのが原則です。
- その日に受ける予防接種の接種液に含まれる成分で、アナフィラキシーをおこしたことのあるお子さん
「アナフィラキシー」というのは通常接種後30分以内におこるひどいアレルギー反応のことです。発汗、顔が急に腫れる、全身にひどいじんましんが出るほか、はきけ、嘔吐(おうと)、声が急に出にくい、息が苦しいなどの症状に続きショック状態になるようなはげしい全身反応のことです。
- BCGワクチン接種の場合においては、外傷などによるケロイドが認められるお子さん
- B型肝炎の予防接種の対象で、母子感染予防として、出生後にB型肝炎ワクチンの接種を受けたお子さん
- ロタウイルス感染症の予防接種の対象者で、腸重積症の既往歴のあることが明らかなお子さん、先天性消化管障害のあるお子さん(その治療が完了したお子さんを除く)及び重症複合免疫不全症の所見が認められるお子さん
- その他、医師が不適当な状態と判断した場合
上の1~7に入らなくても医師が接種が不適当と判断した時はできません。
3.予防接種を受けるに際し、医師とよく相談しなくてはならないお子さん
これに該当すると思われるお子さんは、主治医がいる場合には必ず事前に診ていただき、主治医に接種してもらうか、あるいは診断書又は意見書を持ってから接種に行きましょう。
- 心臓病、腎臓病、肝臓病、血液の病気や発育障害などで治療を受けているお子さん
- 予防接種で、接種後2日以内に発熱のみられたお子さん及び発疹、じんましんなどアレルギーと思われる異常がみられたお子さん
- 過去にけいれんをおこしたことがあるお子さん
けいれんのおこった年齢、そのとき熱があったか、熱がなかったか、その後おこっているか、受けるワクチンの種類は何かなどで条件が異なります。必ずかかりつけ医と事前によく相談しましょう。
- 過去に免疫不全の判断がなされているお子さん及び近親者に先天性免疫不全の者がいるお子さん
- ワクチンにはその製造過程における培養に使う卵の成分、抗菌薬、安定剤などが入っているものがあるので、これらにアレルギーがあるといわれたことのあるお子さん
- BCG接種の場合においては、家族に結核患者がいて長期に接触があった場合など、過去に結核に感染している疑いのあるお子さん
- ロタウイルス感染症の予防接種の場合においては、活動性胃腸疾患や下痢などの胃腸障害のあるお子さん
4.予防接種を受けた後の一般的注意事項
- 予防接種を受けた後30分間は、医療機関でお子さんの様子を観察するか、先生とすぐ連絡をとれるようにしておきましょう。急な副反応が、この間に起こることがまれにあります。
- 接種後、生ワクチンで4週間、不活化ワクチンで1週間は副反応の出現に注意しましょう。
- 接種部位は清潔に保ちましょう。入浴は差し支えありませんが、接種部位をこすることはやめましょう。
- 接種当日は、はげしい運動はさけましょう.
- 接種後、接種部位の異常な反応や体調の変化があった場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。
以上の注意をよく読んで、わからないことがあれば質問しましょう。